デザインも性能も妥協しない!後悔しない注文住宅のつくり方

注文住宅の相談でよく耳にするのが、「デザインと性能、どちらを優先すべきか」という悩みです。
せっかく建てるなら、自分好みのデザインにしたい。でも、夏は涼しく冬は暖かい快適な家にもしたい——。
この2つを両立させるのは簡単ではありません。
見た目だけを追求すると、断熱や気密などの住宅性能が犠牲になり、暮らしの快適さが損なわれることがあります。
反対に、性能ばかりを重視すると、窓が小さくて閉鎖的、素材も無機質で味気ない…そんな後悔をする人も少なくありません。
本記事では、「デザイン」と「性能」を両立させるための考え方と、具体的な工夫・実例をご紹介します。
見た目も機能もあきらめない家づくりのヒントを探してみましょう。
目次
1. 「デザイン」と「性能」——それぞれが意味するもの
デザインとは
「デザインがいい家」というと、外観の美しさを思い浮かべがちですが、実際にはもっと広い意味があります。
間取りの流れ、素材の質感、光の取り込み方、風の抜け方、家具との調和…。
つまり、デザインとは「見た目」だけでなく「暮らし方の設計」そのものを指します。
性能とは
一方の性能は、数値で測ることができる“家の機能”です。
断熱性(UA値)、気密性(C値)、耐震等級、省エネ性、耐久性、メンテナンス性など、目には見えにくい部分が暮らしの質を支えます。
たとえばUA値=0.46以下、C値=1.0以下であれば、東北~関東エリアで「高性能住宅」と呼べる水準です。
これらは「冬暖かく、夏涼しい」「光熱費を抑えられる」「長く快適に暮らせる」ための土台となります。
2. デザイン重視・性能重視——それぞれのメリットと落とし穴
デザイン重視のメリットと注意点
- 自分らしい個性を反映できる
- 暮らしを豊かに見せる空間演出が可能
たとえば、素材の質感や光の入り方、家具との調和を大切にする“見た目のデザイン”に加え、
無垢材や漆喰などの自然素材を取り入れた内装デザインも人気です。
木や土の自然な表情は、住む人の感性に寄り添い、経年変化によって味わいを深めていきます。
また、自然素材には見た目の美しさだけでなく、調湿性・消臭性・断熱性といった機能面でのメリットも。
単なる装飾ではなく、「心地よさ」を生み出す素材としてデザインと性能の橋渡しをしてくれます。
ただし、大開口・吹き抜け・ガラス壁などを多用すると、断熱・気密が低下しやすい点には注意が必要です。
「かっこいいけど、夏は暑くて冬は寒い」とならないために、素材選びや開口設計における性能面の裏づけが欠かせません。
性能重視のメリットと注意点
- 一年を通して快適で省エネ
- 結露やカビを防ぎ、建物寿命が長い
- 地震・台風にも強い
高い断熱性・気密性を備えた住宅は、室温が安定し、光熱費の削減にもつながります。構造的にも強く、家族の安全と長期的な資産価値を守る点で大きなメリットがあります。
一方で、構造や開口に制約が生まれやすく、デザインの自由度が下がる傾向があります。また、性能にばかり目を向けすぎると、素材の表情や質感が乏しく、「安心だけど、どこか閉鎖的」と感じる空間になってしまうことも。
そのため、性能を高めながらも自然素材や手仕事の質感を取り入れることが、“温もりのある高性能住宅”をつくる上での鍵になります。
3. 両立させるための設計の考え方・工夫

① 優先順位を決める
「何を最も重視するか」を家族で明確にしておくことが第一歩です。たとえば「冬の暖かさ」か「吹き抜けの開放感」か。この優先順位がぶれると、デザインも性能も中途半端になってしまいます。
② 高性能建材でデザインを支える
最近では、断熱性・遮熱性の高いサッシやトリプルガラス、付加断熱(ダブル断熱)などを使うことで、大きな窓でも快適さを保てます。「デザインを優先しながら性能を確保する」には、建材と施工精度の両方が重要です。
③ 間取り・開口のバランス設計
吹き抜けを採用する場合は、空気循環ファンや床下エアコンを組み合わせることで温度ムラを抑えられます。また、日射遮蔽(シェード・庇)や通風経路の計画も、見た目に影響せず快適性を保つコツです。
④ 構造と意匠を一体で考える
柱や梁を「隠す」のではなく、あえてデザインとして“見せる”構造美もあります。構造設計と意匠設計を一体で進めることで、強さと美しさを両立した空間が生まれます。
⑤ コスト配分の工夫
すべてを最高グレードにする必要はありません。
たとえば「断熱・気密はしっかり」「外壁はコスパの良い素材」「内装で個性を出す」といったバランスも有効です。大切なのは、“どこに価値を置くか”を明確にすることです。
4. デザインと性能を両立した住宅の実例

高断熱×再エネ×プライバシー設計を両立したGX志向型住宅
設計のポイント
- 断熱等級6(UA値0.37)の高断熱性能を確保
- 太陽光発電+電力の見える化システムで省エネを実現
- 中庭を囲う配置でプライバシーと開放感を両立
- グレーを基調にした落ち着きのあるインテリアデザイン
新潟県・胎内市。山脈の麓という寒冷地で、冬の厳しい寒さや積雪への備えを前提に計画された高性能住宅です。
外観は杉板型枠コンクリート調の外壁、静謐でモダンな印象に仕上げています。
建物性能は長期優良住宅・耐震等級3(許容応力度計算)・断熱等級6(UA値0.37)をクリア。
さらに太陽光発電システム(4.875kW)と、家庭の電力を“見える化”して自動制御する省エネシステムを導入し、
再エネと省エネの両面から住宅性能を高めたGX志向型住宅です。
間取りは中庭を中心にLDKを配置し、採光とプライバシーを両立。
開口部には高い断熱性能を保つ仕様を採用し、外気温の影響を抑えながら、明るく伸びやかな空間を実現しています。
室内はグレーやブラックを基調とし、素材の質感で深みを演出。
お施主様お気に入りのグラフテクトキッチンを中心に、デザインと機能性が調和した空間となっています。
断熱性能・省エネ・デザインを高いレベルで融合させ、未来を見据えた住まいの新しいかたちを体現しています。
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5. デザイン・性能のチェックリストと選び方
家づくりを進める前に確認したいポイント
- デザインと性能の優先順位を家族で話し合っているか
- 建築会社がUA値・C値・耐震等級を明示できるか
- 性能向上の根拠(断熱材・構造計算・施工体制)が説明できるか
- 設計者が構造や省エネの知識を持っているか
- 実例を見学し、「見た目と快適さ」を体感できるか
これらの項目は、家づくりの初期段階で“信頼できるパートナー”を見極めるための重要なチェックポイントです。デザインのセンスや図面の見栄えだけでなく、性能を数値で説明できる透明性、そして暮らし方を理解した提案力を持つ設計者・工務店を選ぶことが、理想の家を実現する第一歩となります。
家族の価値観を共有しながら、デザインと性能のバランスを「感覚」ではなく「根拠」をもって判断することが大切です。
コストと価値の判断軸
「今の建築費」だけでなく、「光熱費・修繕費・快適性」まで含めた“生涯コスト”で考えると、性能に投資する価値が見えてきます。初期費用がやや高くても、長期的には光熱費や修繕費の削減で元を取るケースが多いです。
まとめ:見た目も性能も、どちらも大切にした家づくりを

「デザイン」と「性能」は、どちらかを犠牲にするものではなく、両立できる時代になりました。
素材や工法の進化により、美しさと快適さを兼ね備えた住まいは、もう特別なものではありません。これから注文住宅を考えるなら、“見た目” と “暮らし心地” のバランスを設計段階から意識すること。
そして、その両方を理解して提案してくれる設計者・工務店を選ぶことが、後悔しない家づくりの第一歩です。家は、完成した瞬間ではなく「暮らしはじめてから」が本当のスタート。
デザインと性能の調和が、日々の心地よさをつくります。